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清水永之:ボーカル・レコーディングを極める

第10回:ハーモニー・パートのレコーディング

(2009 年 3 月 2 日)

前回はメイン・ボーカルのダブリングについて説明したが、もちろんハーモニーを付けて音を広げる方法もある。今回はこうしたハーモニー・パートのレコーディングについて解説していこう。両者を組み合わせることによって、よりゴージャスに、さらに派手にすることができる。

■コーラス・パートを作る

まずは少しアレンジ的な話をしておこう。ひと言でハーモニーと言っても単純に上下三度でハモらせたり、四度、五度を使ったハーモニー、ゴスペルのようなコードを使ったハーモニーなどさまざまだ。どのようなハーモニーを付けるのか、ある程度頭において作業した方が効率が良いので、あらかじめハーモニーのガイド・メロディなどを入れたトラックを作っておくと作業が早いだろう。もちろん前回解説したダブルをハーモニーに応用するのもポピュラーな手法である。

そのほか、いわゆるハーモニーではなく、メイン・ボーカルを包むクワイヤーのようなコーラスもある。ダブルはこのような場合にも効果的だ。メイン・ボーカルに寄り添う感じで歌うと、周りを包むような効果が生まれ、メイン・ボーカルをより引き立ててくれるだろう。役割の性質上、メイン・ボーカルよりソフトに歌った方が広がりがあって良い結果につながるはずだ。

このように歌えれば理想的なのだが、アマチュアやこういった作業に慣れていないボーカリストの場合、メイン・ボーカルやほかのパートを聴きながら歌うと往々にしてそのパートにつられてしまうことがある。メインのトラックを聴かずに歌ってもらい、合わせて聴いてみて気になるところを直していくという方法もある。

もちろん実際に歌ってもらってハーモニー・パートを作るのがベストなのだが、実はソフトウェアの力を借りて、メインのボーカルからハーモニーや・パートを作り出してしまうことも可能だ。ただ、どんな場合にも使えるかと言うとそんなわけでもない。それこそケース・バイ・ケースなので、作品としてとらえた場合に「何をどのように記録、表現したいのか?」を考え、使った方が良い場合、使っても良い場合、使わない方が良い場合、使わないとダメな場合などを適切に判断して使う必要がある。これはメイン・ボーカルのピッチ補正などを使う際にも同様で、ニュアンスはそのテイクのままで、ピッチが少しだけ気になるなどという場合や、最近流行のテクノっぽい機械的なボーカルにしたいといった場合には効果的だ。どのようにソフト、ハードを使っていくかをきちんと見極めた上で使わないと「何をどのように記録、表現したいのか?」というポイントがずれてしまうので、注意しよう。

エフェクトやソフトウェアでボーカル・パートを編集する場合は、どの行程で使うのかを考えるのも重要だ。レコーディングしながらどんどん編集するのか? 素材としてレコーディングを終了させてから編集するのか? いずれにしても、レコーディング作業前には考えておいた方が良いだろう。そうしておかないと、以前に触れたように、ボーカリストのメンタルな部分での支障が出てしまう危険もある。

■レコーディングした素材を整理する

今回はこのようなエフェクト、ソフトをできるだけ使わない行程で進めてみよう(これらについては、ミックス作業を解説する際に多少触れてみることにする)。

いよいよ編集、ミックスに向かって行くわけだが、その前に以前解説したレコーディングでのディレクションを参考に、自分なりの方法も取り入れながらより良いボーカルをレコーディングすることを心がけよう。改めてレコーディングは「歌や演奏を通しての表現の記録」ということを忘れずに! 機材やセッティングももちろん大切だが、録音する内容はボーカリストの実力やコンディション次第であることは確かだが、ディレクションによっても全然変わってしまうということも頭においておこう。

そして、よい素材が録りあがったら、編集、ミックス作業を行うことになる。まず、録り上がった素材の整理をしよう。まずダブル、ハーモニー、コーラス・トラックも、メイン・ボーカルのトラックと同様に1本のトラックにまとめる。やり方は第8回で解説したメイン・ボーカルの編集と一緒。すべてのトラックを同様に編集する。

分かりやすくトラックを並べたら、メイン・ボーカル同様にダブルのトラックやハーモニーのトラックの要らない部分をカットしてフェード処理しておく。

以上で素材はすべてそろった、次回はミックス作業を解説しよう。

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