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清水永之:ボーカル・レコーディングを極める

第11回:ミックスダウン

(2009 年 3 月 16 日)

いよいよ本セミナーも残すところあと2回となり、最終段階を迎えた。今回はミックスダウンについてのテクニックを説明していこう。

■ミックスダウンとは?

ミックスダウンとは、文字通り録り上がった音のバランスをとって、ステレオ(場合によってはモノラル)にまとめる作業のことで、トラックダウンTD)とも言う。

ミックスダウンを行うにあたっては、あらかじめどのようなサウンドに仕上げていくのかを決めておくことがポイントで、のちのちまとめやすい。例えば、大ホールで演奏しているような大きな空間なのか、小さい空間なのか、部屋で演奏しているような感じなのか?……さまざまなシチュエーションがイメージできるだろう。

■リバーブとディレイ

空間の広さを演出するために使用するエフェクターがリバーブディレイだ。どんな設定でどの程度の効果をかけるかも曲によって細かく設定しなければならない。例えば先ほど例に出した大きな空間の場合、リバーブの余韻を長めに設定すると残響音が伸びて大きな空間で鳴らしているような効果が得られる。リバーブの種類によっては、部屋の広さや形状なども設定できるので、より細かい音作りをすることができる。

リバーブでは、残響音の音質や初期反射の時間も設定できる。こうした部分も緻密に設定すれば、より細かく空間を作り出すことができる図1)。

●図1-1 四角形の小ホールのようなリバーブの例

●図1-2 七角形の大ホールのようなリバーブの例

●図1-3 別の種類のリバーブ

一方のディレイは、原音に対して一定時間遅れた信号を出力するエフェクトだが、直接時間で設定したり、テンポに合わせて設定したりすることができる。

ミックスダウンでリバーブやディレイをかける際の基本としては、バスドラとベースにはかけないということ。低音の音像がボヤけてはっきりしない締まらない音になってしまう。ただし例外もある。ポップスなどでは基本的にかけないことが多いが、トランス系やノイズ系、テクノ系などではわざとバスドラやベースにリバーブやディレイをかけて広がりを出すという場合もある。。

これらのエフェクトをかける場合は、AUXのトラックを作り、そこにリバーブやディレイを立ち上げ、トラックのセンドでBUSを使ってかける量を調節するようにするのが基本だ(図2)。

●図2-1 右が8分音符、左が4分音符のディレイ

●図2-2 左右8分音符だが、少し前後にずらしてあるディレイ

●図2-3 右が2分音符、左が16分音符のディレイ

数種類のリバーブやディレイを使用する場合もあるが、こういう場合もAUXやBUSを使った方が良い(図3このようにすると、CPUの負担も軽減できるという点でも好ましい

●図3

■音のバランスをとる

素材がそろい、さまざまな設定の準備ができたら、まず各トラックのバランスをとっていこう。本セミナーではボーカルに焦点を当てているので、伴奏(ボーカル以外の楽器)に関しては詳細な解説は割愛するが、ポイントだけは押さえておこう。

まずはリズム系から固めていく。その際ドラムの音色などにもよるが、打ち込み系(生っぽくないドラム)などで、特に4分打ちのバスドラなどの場合は、バスドラが前に出てくるようなミックスにしたい。この場合、ただ音量を大きくするということではなく、大きすぎない音量で、なおかつ前に出てくるような音を作る必要がある。その場合に使用するのがEQやコンプレッサー。これらで音を整えていくわけだが、もちろん最初に設定すればそれでいいというわけではない。まとめていく過程での調整は不可欠なので、あくまで最初の設定は仮のものと考えておこう。

またバスドラの音作りをする場合は、ベースとの兼ね合いも考えなければならない。バスドラとベースのどちらが下に存在するのかが重要である。同じ帯域に置いてしまうと、両方ハッキリとしなくなってしまう。サウンドに応じてよく考えてバランスを決めていかなければならない。このへんは最終的にボーカルを乗せた場合にサウンド全体の仕上がりも左右してしまうので重要なことである。

それ以外のパーカッションはリズムを包むように配置しよう。PAN定位を設定し、音量バランスを調節してお。コードものやシンセサイザーなども、定位を考えてなるべく同じ位置で複数の音は鳴らないように設定しておくと、個々のサウンドがくっきり浮き出てまとめやすくなる。当然バスドラ、ベース、メイン・ボーカルのように同じ位置に複数の音が定位する場合もある。そうした場合は、音量バランスを考え、EQで帯域を、リバーブやディレイで奥行きを調整しておくと各パートが浮き出てくる図4)。

●図4

さて、このようにして伴奏パートを設定したところで、ボーカル・パートに取りかかることになる。最終回では、このへんを解説し、いよいよサウンドを仕上げていこう。

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