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清水永之:ボーカル・レコーディングを極める

最終回:ボーカル・トラックの仕上げとマスタリング

(2009 年 3 月 26 日)

いよいよ本セミナーも最終回だ。レコーディングの方も、ボーカル・パートを作り込んで、最後の仕上げに取りかかろう。

■ボーカル・トラックの処理

ボーカルの音作りは、まずコンプレッサーで全体の音量を調節することから取りかかることにする。少し圧縮率を高くすると、音量のムラが少なくなる。このへんを踏まえて調節しよう1)。続いてイコライザー(EQ)の設定だ。なるべく必要のないところをカットするとボーカルがハッキリと前に出てくる2。音量に関しては、コンプやEQだけでは調整が難しい。音量自体を少し上下させて調整するといいだろう図3)。以前、エフェクトについて触れた折りに、メイン・ボーカルに厚みを付けたいときにはコーラスやハーモナイザーを使うという話をしたが、こうした場合には直接トラックにエフェクトを立ち上げた方が効果的だ図4)。

●図1 コンプレッサーをかける

●図2 EQで必要のないところをカット

●図3 音量を調節する

●図4 厚みを付けたい場合はコーラスやハーモナイザーをかける

ダブルのボーカルの処理の仕方とバランスの取り方にも大きく分けて2つのパターンがある。まず1つはメイン・ボーカルを包むように、両側に付けるという方法。ダブルのバランスもメイン・ボーカルと同じくらいの音量で出すとかなり良い感じになるが、広がりすぎてしまう場合もある。そうすると芯がないサウンドに聴こえてしまう。こういった場合には少し音量を下げるか、あるいはもう1つの方法をとるといい。

そのもう1つの方法とは、ダブル成分の定位を左右に振らず、メインと同じ定位(真ん中)に置き、音量や奥行きで調節するという方法だ。この場合、定位が左右に散らないので、ボーカルが真ん中で鳴っている印象が強くなる。そのため、ある程度の音の広がりがあって、固まりすぎることもないので、スッキリと聴かせることができるだろう。もちろんこの場合も、音量のバランスに注意しないとダブルの音量が前に出すぎて、ピッチが不安定に聴こえてしまうこともある。バランスは慎重に調整したい。

ただし、これらはあくまでもバランス良く仕上げるという方法。自分の作りたいサウンドがボーカルを束のような固まりにしたいといった場合などは、これにこだわらずになるべく厚みが出るような定位や音量にしよう。個人的にはハーモニーの定位を左右に振って、ダブルは真ん中で少し音量を落として奥行きを出す方法が好みである。

以前にも触れたが“歌や演奏を通しての表現の記録”ということを念頭に作り上げていくということを忘れずに。これという正解はないので、自分の表現に一番近い形(ミックス)に近づくように研究してみてほしい。

■マスタリング

最後にマスタリング。まずマスタリングでできることは何か? 最終的にミックスしたものに対して、さらに音圧や音量を最大レベルまで持ち上げたり、音の帯域ごとに調節したりする作業である。もちろんアルバムやミニアルバムなど、複数の曲がある場合にはトータルのバランスを調整するのもこのマスタリングにおける作業である。

このマスタリングの作業、自分でやってみるとなかなか難しかったりするのだが、最近のDAWソフトにはマスタリングで使用するプラグイン・エフェクトはたいてい付属している。まずはテンプレートを選んで、そこから自分の好みに近づけていけば良いだろう。ソフトによってはマルチバンド・コンプ(帯域ごとにコンプを掛けることができる)やリミッターで音圧をコントロールすることができる図5こうした方法で最後まで自分で楽曲をまとめ、仕上げていくプロセスを体験してみるのも楽しいと思う。

●図5 マスタリング・エフェクト

PCベースで楽曲を制作をしていく場合は、データを保存しておいて、後からどんどん調整していくことも可能だ。しかしそれこそ限りがなくなってしまうので、その時その時の最大の表現をするように心がけてほしい。

最後にもう一度言っておこう。レコーディングとは“歌や演奏を通しての表現の記録”である。これを常に頭に置いて、良い作品を作っていってほしいと思う。

では、また次にお目にかかれる機会まで。