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清水永之:ボーカル・レコーディングを極める

第6回:レコーディング環境を整える

(2008 年 12 月 14 日)

前回は、口まわりから発生するノイズを中心に、ボーカル・レコーディング時に注意すべきことを解説したが、気をつけなければいけないノイズの発生源はもちろんこれ以外にもある。ボーカル・レコーディングにおいては、こうしたノイズを抑えつつ、ボーカリストがその実力を十二分に発揮できる環境を整えなければならない。なかなか実際のレコーディングに話が進まなくてもどかしいと思われるかもしれないが、レコーディング前の注意事項を再度確認しておこう。

■機材や環境から発生するノイズ

ボーカル・レコーディングには限ったことではないが、レコーディング時に問題となりがちなのが機材から発生するノイズだ。特に電源まわりから発生するケースも多いので、使用しない機材の電源はオフにしたり、プラグを抜いておこう。また、パソコンを使ったボーカル・レコーディングではオーディオ・インターフェースの使用は不可欠だが、USBからの電源を使用するタイプの製品は要注意だ。接続が簡単で使いやすいのだが、ノイズが乗ることもあるので、高品位な録音を目指すのであれば、別に電源を持つタイプの製品を使用することが望ましい。

既存のスタジオで録音する場合は、しっかりと防音されているので問題ないのだが、自宅録音の場合は周りの環境音にも注意が必要だ。人や動物など声、車の音、近隣の工事やエアコン、時計など発生源は数限りなくある。これらの環境ノイズを完全にシャット・アウトすることは不可能だろうが、カーテンを閉め切ったり、周囲が静かな時間帯を選んでレコーディングするなど、できるだけ少なくするような工夫が必要だ。部屋の照明もノイズ源になりがちだ。日ごろからチェックしておこう。また、外部の音が聞こえるということは、部屋の音も外部に漏れ聞こえているということ。いくら周りが静かだからと言って、真夜中に大きな声で歌って近隣の迷惑にならないように配慮することも必要だ。

実際には、よほど大きな音でなければアンサンブルの楽器数が多い楽曲では気にならないレベルかもしれない。ただし少ないアンサンブル(アコギやピアノのみなど)の場合は細心の注意が必要である。歌が入っていない部分なら後から編集でカットすることも可能だが、歌に乗ってしまったノイズは編集で抑えるにも限度があるので、この作業をおろそかにすると痛い目に合う。慎重にチェックしておこう。

音を録音するのにノイズ対策は不可欠。今回はボーカル・レコーディングに焦点を絞っているが、この辺の注意点はもちろんアコースティック楽器の録音や、アンプの音をマイクで拾うような録音でも同様だ。

■レコーディングとは、歌や演奏を通しての表現を記録すること

少しくどくなってしまうが、ここで実際のレコーディングに入る前に押さえておいた方が良いポイントにもう少し触れることにしよう。エンジニアリングというよりは、少しディレクション寄りの話になってしまうが、これも大事なことである。もちろんレコーディング技術については今後のセミナーの中でポイントをあげて説明していくのだが、レコーディングはただ音を録音するのではなく、“歌や演奏を通しての表現の記録”ととらえておくことも重要である。自分自身の作品においては自分の声、その時のコンディションなどを自己管理する必要があるが、ほかにボーカリストや演奏者がいる場合は、表現を引き出す手助けのためのアドバイスや環境作りも必要である。

録音する楽曲の世界観を理解し、なおかつボーカリストの表現力、コンディションも理解してディレクションすることによって円滑に、なおかつ良い作品を作ることができる。ときにはリラックスできるような場所や飲み物などの配慮も必要だ。もちろんボーカリストによってもさまざまなので、それを見極めてあげることも重要だ。

例えばボーカル・ブース(自宅の部屋などの場合もある)の照明にしても少し薄暗い方が集中できる人、明るい方がノッてくる人、モニターのバランスを気にする人などさまざまである。

録音の進め方では、フルコーラス一気に歌い上げる人、1コーラスずつ確認しながら仕上げていく人、ひら歌(サビメロ以外、いわゆるAメロ、Bメロ)から録っていってサビを最後に歌い上げる人など、これもさまざまである。少しレコーディングの方法からは離れてしまったが、自分のやり方を押しつけるのではなく、ボーカリスト、演奏者が演奏しやすい方法で作業を進めていくことが、“歌や演奏を通しての表現の記録”をするためには必要なので頭に置いておいてほしい。

さて、次回は、いよいよレコーディングがスタート!

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