清水永之:ボーカル・レコーディングを極める
第8回:録音と編集の手順
(2009 年 1 月 26 日)さて、試し録りも終わり、方針を決めていざ本チャンに突入。今回は、まずはメインとなるボーカルを録音編集してみよう。
●まずはフル・コーラスを録音してみる
ボーカル・レコーディングのやり方は前にも述べたが、ボーカリストによって異なる。ここではまず、1回フル・コーラスを録音してみることにしよう。その際に歌詞を3部くらい用意しておいたり、その余白などに表のようなものを作っておくと、ディレクションするのに便利だ。余白を使う場合は、歌詞の各行の後ろにいくつか(テイク分)の欄を設けておいてそこに“○”“△”“×”などのマークをふることができるようにしておくといいだろう(fig.1)。
■fig.1
そして、もっとも良いテイクを元にして、直したい部分だけを録音し直したり(いわゆるパンチ・インと呼ばれるもの)、他のテイクでうまく繋がりそうなテイクをはめ込んでみたりする。パンチ・インをする場合の注意点として、同じトラックで作業する場合、残したいトラックを消さないようにタイミング良く録音することが重要である。
厳密に言うと、以前のテープ・ベースでの録音とは異なり、録ってあるデータがなくなってしまうということはないが、ソフトによっては復旧するのに時間がかかるものもあるので、不安な場合は元のトラックのコピーを作っておいて作業すると安全である(fig.2)。また他のテイクとつなぐ場合もコピー・トラックで作業した方が安全だろう。
■fig.2
パソコンの場合、アンドゥ(作業のやり直し)ができるので、もし失敗してしまった場合でも、すぐ元に戻すことができる。このアンドゥをうまく使うと失敗を避けることはできるのだが、録音直後にアンドゥしてしまうと、録音したばかりのテイクが消えてしまう(これも厳密に言うとパソコン内には残っている場合もあるが、ソフトによっては戻せないものもある)ので注意した方が良い。そのためにも作業用のトラックを作っておくことが賢明である。そして1つの作業が終了する都度、保存も忘れずに!! パソコンがフリーズしてしまい、せっかくレコーディングしたものや編集したものが消えるのを防ぐためにも、マメに保存したほうが良い(パソコン内にバックアップ・データを残すソフトもあるが、何作業か前になってしまうので、バックアップを使う場合は最悪の場合に限る)。
●テイクをうまくつなぐには?
そしてテイクをつなぐポイントをうまく選ばないとノイズが入ってしまうので注意したい。無音から無音までの編集またはパンチ・インであれば、ノイズがのらないので安全だが、音節の途中などでは、うまく繋がらないと“プチッ”などのノイズがのってしまう。
また亀裂音や破裂音(カ行、サ行、タ行……ガ、パ……)などは比較的つなぎやすい。ポイントとしては、クロスフェード(前の音がだんだん消えていくと同時に後の音がだんだん大きく出てくる)をうまく使うということ。それによってつながり方をが滑らかにすることができるだろう(fig.3)。
■fig.3
いろいろと面倒な作業だと思うだろうが、これをきちんとやっておくことが重要である。もちろんこのへんの作業は編集作業なので、録音する内容がボーカルであるか否かには、ある意味関係ない。しかし最終的な音のクオリティを上げるためには手を抜いてはならない作業である。そしてこうした作業は、ボーカリストの負担を軽減するための作業でもある。つまり、何度も歌い直してもらうよりも負担をかけないのは確かだが、待ち時間があまりに長くなりすぎても逆に精神的な負担になることもある。作業に時間がかかってしまうとボーカリストのコンディションを悪くしてしまう場合もあるので注意しなければならない。ボーカリストのコンディションや精神面のバランスをうまくとって作業すると良いだろう。
では、続きは次回に。





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